ただきもの♪




■「birdcage」・10月の猫さん から頂いたお話~Vv


凄いよ!凄いよ!!…以前、猫さんの小説の挿絵を
「勝手に」 描かせてもらったんですが~何と!
そのお礼に…って、ニアメロ+マットのSSを書き下ろしてくださいましたよ!!!

猫さん!…何て良い人なんだろう。。。うううう。。。
お礼を言うのはコチラの方なのに…
「何でもリクエストどーぞv」 って仰ってくださったので、調子こいた管理人
『“猫さんのサイト設定で” マットが → ニアメロの家にやって来る話』
を、お願いしました。そしたらネェアンタ!まー、こんな素晴らしい!!
ひょ~~Vv 全力で自慢しちゃうよ!



※「birdcage」さんの小説設定・・・※
・キラ事件解決後→ メロは生存。
・ニアと再会して一緒に生活しています。2人とも大人。
・ニアニアは身長が伸び、大っきく成長いたしました。
・メロ子は細っこい美人さんです ( ←でも男前~)




上記設定をふまえた上で↓↓↓どぞ!










――――――――――――――――――










transition








「よ~う、ニア、ひっさしぶり!」


夏風が爽やかに吹くある日の午後、

仕事を何とか前倒ししてやり遂げたニアがいそいそと帰宅したら、

そこは修羅場だった。愛しい、愛しい人との愛の巣に、邪魔者の眼鏡男が一匹。


「…これはどういうことですか」

険悪な雰囲気を纏い、リビングの入り口に立ったままニアがメロに尋ねる。

メロは内心ため息をつきながらも表面上は平然と答えた。

「…前から言っておいただろ?マットが遊びに来るって」

「でも、それは明日からのはずなのでは…」

「やー、日程早まっちゃったんだよね~。
仕事思ったより早く終っちまって。ほら、俺って優秀だから」

悪びれずにこやかに言い放つマットに腹の底から怒りが湧く。


「…だったら働き蜂のように次の仕事に取りかかればいいじゃありませんか。閑人」

「…ニアこそ帰って来るの明日じゃなかったけ?サボリ虫」

「それこそ依頼が早く済んだんですよ。私は優秀ですから」



チクチクと嫌味まじりの会話をヒートアップさせつつある二人に

メロはまた深いため息をついた。この二人は顔を合わせばこうだ。

ニアが大人げ無いのは何時ものことだが、

マットも調子に乗ってからかうから何時も収集が着かなくなる。

しかもその習慣はワイミーズ時代からのもので、もう互いに大きく成長したというのに、

本当に困った大人達だ。



「…いい加減にしないか二人とも。ニア、昼は?いらないのか?」

メロがちょっと冷たい口調で尋ねると、ニアはピン、と背を伸ばしてにこやかに答える。


「もちろんいただきます。」 「俺も~

そこに空かさずマットの声が重なり、ニアは目を剥いた。


「!…何であなたまで!!ちょっと図々しくないですか?人の家で!!」

ニアのヒステリックな反応にメロが諌める。

「ニア、マットは俺の客だ。俺がもてなしちゃいけないのか?」
「…メロ」

その言葉に悲しそうにメロを見やると、空かさずマットが

「さっすがメロちゃんヤッサシ~vv

などと手を打った。それが妙に腹立たしい。



(何なんだこれは…!)
マットの存在以上にメロの冷たい対応にニアは泣き出しそうになる。


以前から検討されていたマットの家への招待は、最近になってようやく、

ニアが折れた形で実現した。それは一応覚悟していたから、その前にメロと少しでもいちゃつきたくて

折角早めに帰って来たのに。なんでお邪魔虫と前倒しでお付き合いするハメにならなくてはいけないのか。


しかも、彼の滞在中はセックスどころかキスまでお預けに決まっているのだ。

ブッスリと黙り込んだニアを横目にマットは軽い身のこなしでソファから立ち上がると、

「俺も手伝うよ、何すればいい?」とメロの肩に手を置いて尋ねた。


(寄るな触るな話しかけるな!!)マットの行動に慌ててニアは対抗して、

「私がやります。お客様は座っていて下さい」

と二人の間に入り込み冷たく言い返した。しかしマットも負けていない。


「あ~ん?そんなこと言ったって、ニア何も出来ないじゃん。
たまには俺がメロに楽させてやってもいいだろ?なあ、メロ、何食べたい?俺が作るよ」

などと言い募る。


その甘ったるい言い方にとうとうニアの堪忍袋の緒が切れた。



元々ニアはマットにはちょっとしたコンプレックスがある。

それを堂々とひけらかすこの男にメロが甘いこともニアの苛立に油を注いだ。

「この家の主人は私です!!客は黙って座ってて下さい!!
大体この家のことなんか、あなたにだって何にもわからないじゃないですか!!」

思わずニアがそう叫ぶと、マットも感情の籠らない眼で言い返す。


「ああん?誰が誰のご主人様だって?何偉そうに。
こんなヤツが亭主面してる何て、メロちゃん可哀想に。俺だったら…」

「そんなこと言ってないでしょう!私はですねえ、」




「…うるさい」  ボソリ。 ピタリ。


「…メロちゃん?」
「メロ?」


何故だか真ん中に挟まれて両脇から訳のわからない

言い分を聞かされていたメロはとうとう切れたようだ。


目が据わっている。バカ面の二人は恐る恐る何か言い出そうとしたがその前に、
メロは両手で各々の胸ぐらを掴んで

「お前ら二人とも五月蝿い!!出てけー!!」

と玄関まで引っ張って、大の男二人を家から勢いよく放り出した。












しくしくしくしく。
「メロ…」


いい年して上下白スウェットの気の抜けた服装で悲しみに沈む鬱陶しい白男に、

マットはジンジャーエールとホットドッグを与えてみた。しかしニアはそれを一口齧ると


「…まずいです」

とぼそりと言って、安っぽい造りのテーブルの端へ寄せた。


「…お前、ホントに変わんねーのな…」

あきれ顔でマットが言うのにカチンとくる。


「何ですか。大体何で私がこんな店に来なくちゃ行けないんですか。本当なら今頃は
メロの美味しい手料理を…」

「だって俺、こう言うのが好きなんだもーん」


ふてくされるニアを横目にそう言ってマットは自分の分にかぶりつく。

だったら始めっから食事くらい済ませてくればいいじゃないか。

いや、それ以前に約束の予定を前倒しして押し掛けてくるとはどういう神経だ。

ニアはぶちぶちと心の中で一人ごちる。しかし。


「メロには許可貰ったよ?」

そんなニアの思考を見抜いたようにマットは言って食べ終わったホットドッグの紙袋をクシャリと丸めて

コーラをすすった。  

その言葉にニアは思いっきり動揺した。


「はあ?」
(まさか…、メロは…)

「で、多分お前さんもフライングで帰ってくるから丁度いいだろうって、」


見抜かれてるねー旦那。からかうように付け足したマットの言葉にニアは胃のあたりが重くなった。

メロの浮気を疑うなんて、とんでもないことだった。

自己嫌悪にちょっと涙目になったニアを眼鏡越しに感情の見えない瞳で捉えたマットは


「じゃ、ちょっと歩くかぁ」

と、嫌がり家に帰りたがるニアに無理矢理街の案内をさせることにした。









ニアとメロが住んでいる街の規模はそこそこ大きいが、住居がある一帯は

昔からの住人によって構成される古いコミュニティに属していた。

その集団は小さくこじんまりとしていて、住民同士の関係も密接だ。

一歩歩みを進めるごとに ニアの眉間にある苦悩の皺は深くなり、

マットは愉快そうにますますにやにやとした笑いを浮かべて相好を崩した。



「あらニアさん、今日はメロさんは一緒じゃないのね」


「あらイイ男!!あんたにも友達いたのね~。なかなか出来ないんだから、一生大事にしなさいよ。
…ついでにおしゃれも教えてもらうといいわ!」


「へへ、こいつ常識知らずだから、あんたも苦労するだろうけどよろしくな」


初見のマットと顔を合わせる連中は、皆好き勝手言って挨拶しては去って行く。そして、


「旦那、これメロさんへ」

「今日は一緒じゃないのね。じゃあ、これ届けてくれるかしら。お友達もどうぞ」

「あらー、今日のオレンジはいいのが入っているのよ~。お土産に持って帰りなさい」


と主にメロに宛てられ押し付けられた荷物はみるみる膨らんで行った。




そこに近所のちびっ子連中が遠慮無しに全力でぶつかってくる。


「ニア、どうしたの?今日はメロ兄ちゃんはいないの?」

「ケンカしたの?」

「追い出されたんだ!」

「お仕置きだ~!!」


好き勝手にそのものズバリのことを言い放ち、両手に大荷物の体勢を何とか立て直したニアが

反論しようと口を開きかけると、子ども達はきゃあきゃあと嬉しそうに四方に去って行った。

くくくっ…後ろで忍び笑いを漏らす眼鏡に殺意が湧く。







「いや、いいモン見ちゃったな~、と」


眼に涙まで浮かべ、おもしろがるマットは「御礼に茶の一杯でも奢ってやるよ」、と

ニアの荷物をいくつか取り上げると


「今度はお前の行きたい店に入ろうぜ」とニアを先に歩かせて案内させた。






黒っぽく染めた髪に所々メッシュを入れ、

どこかのブランドらしき黒地に赤で文様がプリントされたシャツに銀糸の刺繍の入ったジーンズを纏い、

足元は清潔なスニーカー。それにゴツゴツとしたシルバーアクセサリーを合わせて

さらりと着こなしているマットはシックな店内でとても目立っていた。

もしかしたらその真向かいの猫背の白ずくめとあまりにもバランスが取れていない所為かもしれない。

ニアは折角お気に入りの店に入ったのに、また胃のあたりが重くなった。



ニアは基本的にはあまり人の意見を重視しないタイプだ。着るものにも気を使わない。

別に誰がどう思おうが、どんなふうに見ようがニアが解くべき世界の問題の結論は変わらず、

最も効率の良い選択肢を計算に従い自動的に選べばいいというのが

ニアが導き出した人生方針だった。他人の価値観など彼自身には必要ではない。

しかし、メロのことが関わると話は別だった。


メロはおしゃれだ。そしてスタイルもいい。マットと並ぶとさぞ絵になるだろう。

それに、会話だって息がぴったりで、マットはメロの突飛な思考を理解して、

ニアと同じ引きこもり族のくせに、メロのやることに幼い頃から良く付き合ってやっていた。


気も利く方だからメロもきっとマットといる方が心地よいのではないだろうか。

そんな風についついひねくれた思考が首をもたげる。

ワイミーズ時代のコンプレックスが大人になった今も続いていることにニアは絶望的な気分になった。



「…ニアはさあ、」

マットはアイスティーをすすって言葉を吐き出した。


「まだ俺のこと嫌いなの?」

「はい」


あまりにもはっきりとした答えにマットは苦笑いするしか無かった。

ホントにこいつ変わってねー。最悪。それでも、茶化すようにマットは言葉を重ねる。


「何でよ?俺お前に何かした覚え無いんだけど」

「…メロと仲が良い。それだけで嫌う理由としては十分です」


天才のクセして理論として破綻している答えをニアはきっぱりあっさりと言い放った。

やっぱコイツ、アホだ。マジサイアク。



「…メロはお前以外と仲良くしちゃいけないのかよ。友達がいちゃいけないのか?」

マットが呆れ口調に言うのを、ニアはぼそりと暗い顔をして言った。


「…あなたとの関係は聞いています」


友達なんかじゃないだろう、そんな言外の意味を含ませたニアの言葉を

マットは眼を眇めて受け取り、返す。


「…で?」

感情の読み取れない眼。ああ、変わっていない。

あの頃も今も、私はマットの思考の真意がわからない。


「…いえ、ただ、それだけです」

ニアはそう言って、すっかり冷めてしまったコーヒーにミルクを注いだ。

ゆっくりとスプーンをかき回すと、それは渦になって、もがくように溶けて行った。











キラ事件の決着の直前、メロは当時キラの代弁者であるアナウンサー、高田清美を誘拐し、

キラの手に寄る殺人であろう爆発炎上に巻き込まれ死んだ。

そして同時期に仲間であったマットは高田の護衛に銃撃を受けながらも

何とか生きた状態で身柄を確保され、日本警察の監視下の病院に収容されていた。




コツ、コツ…。

機械に囲まれた冷たい空間に足跡はやたら鮮明に響いた。

キラ事件後、何とか回復したマットは両手を手錠で拘束されたままニアに引き渡された。

キラ事件に関する関係者の処理はニアに一度委ねられ、そこからICPOによって各国に

特別捜査組織が組まれ、後処理が進められていたが、マットに関する処分は日本警察から

ニアへ一任されていた。



「…」


互いに言うべきことは特に無かった。一番大事なものは失われてしまった。

ニアの合図によって拘束が解かれると、マットに所持品が戻された。

資金から偽造パスポート、その他の機材。アジトから押収されたものも全て揃っていた。


「…いいの?まだ報告とかあるんじゃないの?」

中身を検分したマットがそう問うと、ニアは振り向きもせずに「もう終りました」とだけ答えた。

そしてそのまま、横にいた監視役の捜査官に促され、部屋を出ようとしたところで呼び止められた。


「…メロは、…あなたと一緒にいたのですか?」

ワイミーズを出てからの空白の4年間。その答えはYESでもありNOでもあった。

常に行動を共にしていた訳ではない。


メロは、マットを巻き込むことを最後まで躊躇していた。

そう告げると、それでも、と。ニアは小さな声で言った。


「…あなたがいてくれて良かった。…メロの側にいてくれて、ありがとうございました」





嘘をつくな。




本当はその蹲った小さな背にそう言い返してやりたかった。

ありがとうなんて海の砂一粒程も思っても無いくせに。

どうして守り抜けなかったと、どうして一人で逝かせたのだと、

俺を殺したいくらいの気持ちでいるくせに。


「…」

けれど、確認する気にもなれなくて。

マットはくるりと背を向けると、無言のままニアの元を去った。

そして、その足でアメリカに向かった。

生きている、メロの元へ。
















「あなたは馬鹿です」


カラリと、アイスティーを飲み干したグラスを揺らしたら音がした。

その涼しげな音をもう一度聞きたくて、わざと揺らしてみる。


「あなたは馬鹿です。メロを、手離さなければ良かったのに」


言い表せない感情の替わりに、ガラリとグラスの中の氷が音を立てて崩れた。
















マットは解放された後、打ち合わせをしていた通りメロとアメリカ東北部の街で再会し、

生活を共にし始めた。

メロが望んでいたような、名も無い街で小さな家を借り、犬と暮らす…という暮らしまでは

なかなか思うようにはいかなかった。

何しろ自分たちはそもそも普通の生活の仕方がわからないのだから。

そこで小さなモーテルを一定期間借り、生活の訓練を少しずつしていった。

自分たちで買物をして料理を作り、洗濯をして、掃除もする。


メロはチョコばっか買って他にほとんど食べなくて俺に叱られて、

俺はジャンクフードばっか食べてメロに叱られた。


メロは掃除が好きで、料理が想像以上に上手くて、はっきり言って完璧だった。

でも俺だってそう悪くはなかった。


ま、メロからしてみれば 「まあ、見捨てられないくらいには、な」ってレベルだったみたいだけどさ。

ヒッデエ。



それでも俺は馬鹿みたいに幸せだった。メロがこっち側に帰って来た。

ちゃんと、幸せに生きようとする場所に帰って来たんだと思うと、バカみたいに嬉しくて幸せで

どうしようもなかった。



だけど、気が付いてしまった。メロが未だに何かに耐えていることに。

そして、俺が先に耐えられなくなった。気付かないふりをしていられなかった。

自分の側で、心を殺して、それでも無理に笑っているメロが痛かった。

どんなに大切にしても、メロが本当に望んでいるものを彼に与えてやれない

自分に気が狂いそうだった。


その手を離したくなかったし、彼の温もりを諦めたくもなかった。

でも、自分の腕の中で、痩せ枯れて行くメロを見るのに耐えられなかった。

ニアが最初からいなかったら良かったのに。


そうすれば、メロはこんなにも傷つきながら焦がれたりしなかった。

誰かの為に生きるなんて、自分を壊しながらしていいことじゃない。

ニアが永遠に失われてしまえば良いのに、とさえ思った。

そうすれば、メロは永遠に俺のものになるだろう。

体だけではなく、その心までも。



でも、現実はそうじゃなかった。ニアは生きていて、

メロが望めば、手を伸ばせば、簡単に触れられる場所にいるのだ。

そして、メロの生殺与奪権は今も昔も、結局ニアの元にあるのだと認めざるを得なかった。




「…ニアに会ってきたら?」


「…何を言ってる」


ある日、本当に何気なく、軽く提案されたマットの言葉にメロは硬い表情で問い返した。

(会いたいんだろ?)そうは言えなくて、


「だって、ちゃんと終らせないと。キラ事件は結局引き分けだった訳じゃん」

「…いや、今回はあいつの」

「ニアだけじゃ負けてたでしょー?」


マットは軽い口調で、でも譲らない強さで言った。メロはやっぱり固い顔をしている。

それは賭けだった。


ニアが堅い殻をかぶったままだったら、メロは今度こそ逃げるだろう。

幸せに生きていて欲しいと願う声をメロは聞くことが出来るようになった。

なら、ニアがまたメロに酷いことをするようなら、今度こそメロはニアから自由になれる。

そして、きっと俺の元に帰って来てくれる。 俺はそれに賭けたんだ。


ニアが変わらず、あの性格のネジくれ曲がった人格破綻者であることに。

でもそうじゃなかった。




ニアはメロをもう一度手に入れた。そして、もう二度と離さなかった。


























カラン、と溶けた氷の水の中で泳ぐ、小さくなった氷はかすかなかすかな悲鳴を上げる。


「…じゃあさ、お前はメロを手放すのかよ?これから、
何かがあればあいつを解放してやれるのか?」

マットの愚問をニアは鼻でせせら笑う。


「出来ないに決まっているでしょう。…でも、メロが苦しむなら私は私を殺します」

その揺るぎない言葉にマットは「ははは、…」と力なく笑った。変わってねえ。


やっぱりコイツはイカレタ変人だ。

…でも、メロを大事にできるようになった。ちゃんと、メロを愛せるようになった。

それだけで、十分な気がした。

ニアの元に帰ってから、メロは絶対にニアのいない場所では俺と会わないと宣言した。

それを俺は受け入れた。親友でいることには変わりないと、会うのを要求する替わりに。


(俺ってばマゾかもしんない)


ニアの側で、柔らかな表情を見せるメロを見て、やっぱり胸の中でちくりと何かが刺す。

それでも、自分といた時より血の通ったメロを見ている方がずっと幸せなのだと思う自分がいる。


「いや、やっぱ天才っしょ。俺ってば。肝心なトコ、外さないから」

真相はどこにあるのか、もう自分でもわからずにいる。でも。


「…馬鹿ですよ、あなたは。…でも、」

感謝しています。そう言って、ニアは泥のように冷えて重くなったコーヒーを飲み干した。

窓の外にはもう、夜の気配が忍び込んでいた。














「遅いーっ!!」 帰って来た二人にメロは小言をくれて反省させると、

美味しい夕飯を作って食べさせ、入浴させた。

そしてドリンクを用意し、リビングで少しおしゃべりをした後は、ベッドに入れと命じた。


「ええー、まだ12時だよう?」

夜の住民のマットが不満げに言うと、メロはチラリとニアを見る。

無理も無い、仕事を前倒しにやっつけてしまう為、相当無茶をしたのだろう。

彼は既に眠りの渕を漂い、頭がぐらぐらしていた。


それにマットだって相当無理して仕事をしてきているはずだ。

サングラスの奥の睡眠不足をメロはとっくに見抜いていた。


「もう寝ろ。明日もあるんだから、今日無理しなくていいだろ」

そう言うメロはやっぱり相変わらず皆のお兄さんで。


ワイミーズにいた頃、言うことを聞かないと散々叱られたことを思い出して

ニアとマットはこっそり顔を見合わせると、肩をすくめてちょっとだけ笑い合った。

変わったけれど、変わってない。


年とは逆に背も伸びて(何故か今一番でっかいのは一番チビだったニアだ!

そんで俺、最後にメロ。

きっと人の世話ばっか焼いてるから、自分はガリガリで背も成長しそこねたんだと思う)

それぞれに大人になったけれど、きっと根っこの部分は変わっていない。

ニアは相変わらず変人で、メロはやっぱり皆の兄ちゃんだ。そして俺は…。

ニアの寝室を借りたマットは苦笑いしてベッドに寝転がった。


客室が無いから、あの二人はメロの寝室で寝るそうだ。

二人一緒に部屋に消えて行く酷く嬉しそうなニアの横顔を思い出して、マットは顔をしかめた。



ちぇ。俺ってば…

「相変わらず損な役回りですよー」

宿命かもな。そう一人ごちて。

眼を閉じるとマットはあっという間に深い眠りに落ちて行った。























「んじゃ、またね、」


出発間際の電車の前で、マットがそう手の平をひらひらと振ると、

メロに背後からがっちりと抱きついたニアに「イーっ」とされる。

メロがそれに気が付いてニアのおでこをベチリと叩く。


あーあ。オアツイコト。


マットは笑った。

まだちくりと痛む何かが胸の内にある。それでも安心するのは、メロが確かに幸せだから。

きっと二人はもう、大丈夫だ。



「んじゃね」


ちゅっ、とメロの頬にキスするとニアが眼を剥いたので

ニアの口にもキスしてやると今度はメロが眼を剥いた。








丁度いいタイミングで出発のベルが鳴る。

「じゃな、」

「ああ」

「…はい」







それぞれにそれぞれの思いを抱いて。

変わって行く明日と、変わらない大切なものを抱いて、少しずつ歩いて行けば良い。



そんな風に思いながら、マットは流れて行く景色に手を振った。




















――――――――――――――――――

マット ―――――――!!!!!
カッコ良すぎだぁ!!!!!ちくしょうめ!! キュンキュンVv

あんまり嬉しかったので、またまた勝手にコラボしてしまいますたw
今度は断りナシでも良いんだよ!だって、このお話、私が貰ったんだもん!!(笑)
ひょひょひょひょ~♪ …なんて嘘です。ゴメンナサイ。。。


10月の猫さん。素晴らしいお話を、本当にありがとうございました!!

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2007.8.12